「漁火（いさりび）」

海とともに生きてきた日本人の暮らしに根付いた、夏の夜の風景。

古くから、イカ漁やサバ漁の盛んな沿岸地域では、暗い海にぽつりぽつり灯るその光が、日々の営みをやさしく照らしてきました。

海辺に住む多くの人にとって、それはどこか懐かしい郷愁を誘う風景です。

深い黒色は、夜の海が抱く静けさ。
濃い赤色は、燃え盛る火のゆらめき。
その対比は、夜の海に浮かぶ漁火の光景そのものです。

箸の上部に散りばめられた貝の輝きは、漁火の灯りが水面にきらきらと照らされる様子を表現。

頭から持ち手にかけて施された自然なグラデーションは、職人の繊細な吹き付け技法によって生まれたもの。やわらかな色の移ろいが、箸全体に上品でやさしい印象を与えています。

また、持ち手部分には、「墨流（すみながし）」の技法を用いて渦模様を転写。燃え上がる炎の煙が、静かに闇夜へと溶けていく情景を重ねました。

箸先も黒と赤で色付けし、滑り止めを施しました。

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「いさり火」は、海とともに生きる人々の営みと、そこに宿るしなやかさを映した一膳。

現代では灯りの技術こそ変わりましたが、夜の海に浮かぶ漁火の風景は今もなお受け継がれ、その灯りに込められた祈りや美しさは、日々変わることなく人々の暮らしのー風景として息づいています。

みなさんの食卓でも、ぜひ静かであたたかな光を灯してみてください。