綾のようにしなやかに、指先のように繊細に。
京都の料理人の感性から生まれた「京のあやさし箸」は、京都で育った銘竹、竹材職人の確かな手仕事、そして京都で精製された漆の美しさが重なり合って生まれました。
京都の技がいくつも重なり合うことで完成する特別な一膳。
今回は、京のあやさし箸の持つ絶妙なバランス形状を作り出す、竹材職人・高波義さんの工房にお邪魔しました。
この道30年。
竹を見極め、整え、一本一本手で削る——
長年の経験と感覚によって生まれる確かな手仕事をご紹介します。

素材は京銘竹から始まる

作業台の前、壁一面に並べられた高波さんの仕事道具
高波さんの工房は、ご自宅の一角。中に入るなりすぐに目に留まったのは、壁際一面に並んだトンカチ、ペンチ、かんな——大小さまざまな仕事道具すべてが作業台から手の届く範囲に整然と置かれていました。
「箸づくりは、素材選びから始まります。京銘竹の品質は日本一ですね。竹を採取したあとにまず油抜きをして、そこからさらに二夏越す。水分をしっかり抜いておかないと、曲がったり、虫が入ったりしてしまうから。九州の竹は比較的柔らかくて、家具や籠づくりに向いています。でも京都の竹は硬くて、独特の艶がある。火であぶると竹の油分が表に出てきて、さらに美しい光沢が生まれます。その強さと光沢感が、箸という繊細な道具をつくるのにはとても適しています」
箸になる竹はほんの一部
「箸は厚みが7.5mm以上ないと使えないから、竹の上の方は薄すぎてだめ。下の方も節が多くて適さない。結果として竹の真ん中の部分から数膳分ほどしか取れないので、とても貴重です。中が汚れていたり、皮目に傷があれば、もちろん使えません。仕入れた竹のうち1〜2割ほどはこの時点で選り落とすこともあります」

切ったものを、さらにしっかり乾燥して保管している
そう言って、竹の表面を指先でなぞり、わずかな傷や曲がりを静かに読み取っていく。合格したものだけが箸用の長さに切り分けられ、後の削りの工程で微調整できるよう、最終的な仕上がりより1センチほど長めに余裕を持たせておくのだという。
竹の癖を見極める
「竹は一見真っ直ぐに見えますけど、実は必ず曲がり癖があります。特に皮目に沿って、自然と曲がってくる。だから僕が最初にやるのは、熱を使った矯正です。ここでまず真っ直ぐにしておかないと、その後にどんなに削っても綺麗な箸にはならないです。このひと手間が、うちの大きな特徴でもあります」
火であぶりながら素材を少しずつ真っ直ぐに調整するこの工程が、美しい仕上がりの土台になっている。
箸は「対」でつくられる

分かりやすいように対でまとめられた箸
ある程度の箸の大きさに切り分けられた竹には、小さく印が入れられていたり、ゴムでとめられていた。何のための印か尋ねると、高波さんは間を置くことなくこう答えてくれた。
「箸は一本ではなく、必ず二本一膳で完成します。だから途中で片割れが迷子にならないように、最初の段階で対になるものに同じ印をつけておきます。竹は色も繊維も一本一本微妙に違うので、隣り合って取ったもの同士でないと、色味や繊維の質感、曲がり具合が揃わない。左右を逆にすることもできません。同じ竹、同じ向き、同じ並び。それらが揃って初めて、一膳の箸として成立します」
四角から、八角へ、そして丸へ
皮目を整えたあとは、腹目の方をかんなで四角に削り出す。そこから八角へ、さらにヤスリで滑らかな丸へ。お手製の治具に竹を固定し、寸法を測っては削り、また測っては削る。

正確にミリ単位の箸の長さ、幅を測る様子
「よく『どうやって、こんなにきれいな丸になるんですか?』と聞かれるんですけど、見ての通りサンダーは使っていません。竹は真円ではないし、柔らかさも一本一本違う。機械に任せると、どうしても削りすぎる部分が出てしまうので、手でやった方が細かく加減ができて、結果的に均一になる。竹の繊維を見れば、硬さもだいたい分かります。茶色っぽいものは硬く、ぼやっと白っぽいものは柔らかい。色も手触りも、ものづくりの大切な判断材料になります」
そう話しながらも、手は止まらない。大きさの違うかんなを次々と変えながら、淡々と作業を進めていく高波さん。言葉は途切れても、かんなで材を削る音だけが静かに工房に響いていた。

箸と対話するようにかんなで微調整を重ねていく
竹の力強さとしなやかさを最大限に引き出し、箸先のわずかな角度にまで美意識が息づく「京のあやさし箸」。30年かけて培われた目と手が、この一膳の中に静かに宿っています。
手に取った時に感じる軽さと馴染みの良さは、単なる偶然ではありません。竹と向き合い続けた職人の確かな技術がかたちとなったもの。
日々の食卓から、おもてなしの席まで、ぜひその手仕事の心地よさをお楽しみください。

作業台の前で優しく対応してくれた高波義さん
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京のあやさし箸 22.5cm
https://www.hashikura1922.com/view/item/000000001891
京のあやさし箸 24cm
https://www.hashikura1922.com/view/item/000000001890
京のあやさし箸 27cm
https://www.hashikura1922.com/view/item/000000001889
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photo:堀越 一孝
text:梁 翠芳
