箸の歴史
箸の歴史
日本の箸の歴史は弥生時代にまで遡ります。この時代の箸は今のような2本の棒ではなく、竹を折り曲げたピンセット状のものでした。稲作をはじめとする農耕文化が大陸から伝来した際に、稲の神様に捧げるお祭りの道具として伝わったとされます。3世紀の日本の様子を記す魏志倭人伝では、邪馬台国の人々が手で食事をしていたと書かれています。
食事の席で2本の棒状の箸をはじめて採用したのは聖徳太子。中国からのお客様をお迎えする際に、大陸風のおもてなしをするために匙(スプーン)と箸を採用しました。実際に庶民にまで箸文化が根付いたのは、奈良時代以降。現在のように箸だけで食事するようになったのは、武士が政治をはじめた鎌倉時代以降だと言われています。
箸の産地・小浜
福井県小浜市内には箸に関連する会社が多く存在します。特に西津と呼ばれる地域で箸産業が盛んです。
かつて西津地域には足軽(位の低い武士)の住居群がありました。平和だった江戸時代、武士と言っても戦がなかったので、内職をして生計を立てていました。その一つが、若狭塗の内職です。漆を塗ることに長けていた足軽たちは、廃藩後に武士の位を失うと、竹を切り出し漆を塗り“塗箸“として販売を始めたと言い伝えられています。
ここでいう塗箸は若狭塗の伝統的な技術を用いたものではなく、竹の木地に漆を塗った簡易的な箸のこと。従来の若狭塗はつくるのに1年ほどかかるのに対し、簡易的な塗箸は短期間で作ることができ、価格も安いので大衆にも人気を博しました。
また、庶民の日用品としては、箸の他にお椀などが挙げられますが、近隣に輪島・山中・越前など高度な技術を持つ漆器産地があったため、これらの産地が手を出さない隙間産業として箸を作りはじめたのではないかと考えられています。
若狭の塗箸は漆を幾重にも塗り重ねて作ることから”若狭のバカ塗り”と呼ばれるようになりました。これは日用品としての堅牢さ・丈夫さをたたえた褒め言葉です。